行の長さ

ウェブページの和文横組みの本文で、適切な行の長さはどのくらいか。もちろんこれは一概に言えるものではなく、内容、デバイス、書体、行間など、様々な要素に左右されます。しかし多くの場合、読みやすい行の長さは24字から40字程度で、長くても48字程度までにすると良い、というのが僕の意見です。これは僕の感覚もありますが、以下のようなガイドラインや実例を参考にしています。

まず欧文の場合、『The Elements of Typographic Style』にある「45字から75字」というガイドラインがスタンダードとして広く受け入れられているらしく、ウェブ・デザインについての書籍やブログ記事でも多く参照されています。

Anything from 45 to 75 characters is widely regarded as a satisfactory length of line for a single-column page set in a serifed text face in a text size. The 66-character line (counting both letters and spaces) is widely regarded as ideal. For Multiple-column work, a better average is 40 to 50 characters.

If the type is well set and printed, lines of 85 or 90 characters will pose no problem in discontinuous texts, such as bibliographies, or, with generous leading, in footnotes. But even with generous leading, a line that average more than 75 or 80 characters is likely to be too long for continuous reading.

ウェブではWCAG 2.0にテキストブロックの幅についてのガイドラインがあり、行の長さが80字(CJKの場合は40字)を超えないように、としています(1.4.8 Visual Presentation)。

For people with some reading or vision disabilities, long lines of text can become a significant barrier. They have trouble keeping their place and following the flow of text. Having a narrow block of text makes it easier for them to continue on to the next line in a block. Lines should not exceed 80 characters or glyphs (40 if CJK), where glyphs are the element of writing in the writing system for the text.

Kindle電子書籍リーダーには、文字のサイズやページの余白をコントロールする機能があります。手元のKindle Voyageでは、和文横組みの書籍を横画面モードで表示し、文字サイズとページ余白をともに最小にしたとき、1行は45字でした(ちなみに縦組み・縦画面では46文字)。

日本語で書かれたデザインの本でも和文横組みのガイドラインを探してみましたが、あまり見つけられていません。『デザインの教室 手を動かして学ぶデザイントレーニング』では20字から30字程度が読みやすいとし、15字は「少し短い」、40字は「あまり推奨できない」、50字は「限界を超えている」とのことです。『タイポグラフィの基本ルール』では、30字から40字程度が最長、13字から15字程度を最短としています。

また、手元にあったオライリー・ジャパンの技術書のいくつかで実際の文字数をカウントしてみたところ、もっとも短いもので42字、長いものは48字でした。和書としてはやや長めの印象を受けます。

ちなみに、42字の『メンテナブルJavaScript』と48字の『JavaScript 第6版』を比較すると、判型は同じであるため、文字サイズは当然後者の方が小さいのですが、ページあたりの行数はどちらも38でした。つまり行が長いほど行間が広くとられていることになります。これはウェブ・デザインでも同様で、行が多少長くても行間を広くすることで読みやすくできるし、逆にモバイルなどで行の長さが制限される場合は行間を詰めると良いです。

以上をざっくり総合して、読みやすい上限は40字程度かな、と考えました。個人的な感覚から言ってもだいたいそのくらいです。これを「45字から75字程度が読みやすいが、場合によっては90字程度もあり」という欧文のスタンダードに当てはめてみると、「24字から40字程度が最適、長くても48字程度まで」という和文横組みのガイドラインが導き出されます。実際には、内容やほかのデザイン要素を考慮して調整することになりますが、おおむねこのあたりを基準にして良さそうな気がします。