Electric Arguments: The Fireman

ザ・ファイアーマン のサード・アルバム、『エレクトリック・アーギュメンツ』がいい。かなりいい。

ザ・ファイアーマンといえば、ポール・マッカートニー がキリング・ジョークの ユース とはじめたユニット。活動は不定期で、1993 年と 1998 年にアルバムを発表している。サウンドはアンビエントというかエクスペリメンタルというか、僕らが知るポールの音楽とは違う、実験的なものだった。まあ周囲の捉え方としては、ポールのソロ・キャリアの合間のちょっとした息抜きでしょ、みたいな感じで、実際、今までの 2 枚のアルバムはポールのファンでさえ扱いに困ってきまりの悪い愛想笑いを浮かべるしかないような微妙な作品で、ほぼ無かったことになってた。それが…

ごらんの有様だよ。早い話がこれ、ユースとの共同プロデュースによるポールの新作だよな。ポールお得意の一人多重録音が中心、しかも全編ヴォーカル入り。リラックスしつつも緊張感があって、ラフなようでいて繊細な音作り。楽曲の質も高い。それに今回はベースもいいね。ポールをシンガーやソングライターとしてよりもまずベース・プレイヤーとして認識している僕としては嬉しい。

それにしてもこの 66 歳、ここへきてのやりたい放題ぶりは目に余る。ナイジェル・ゴドリッチと組んでみたり、古巣を離れて新レーベルに移籍してみたり、余興と見せかけてガチ新譜を出してみたり…まだやるか、と。