僕が HTML 4.01 を選ぶ理由

このサイトの文書型を XHTML 1.0 から HTML 4.01 に変更しました。

その理由を説明するために、まずはそもそも XHTML だった理由から振り返ってみます。結論から言ってしまえば、まあその、「とりあえず」、ですね。僕が Web デザインの勉強を始めたのが 2006 年初頭で、そのときに参考書として選んだのが 2005 年 7 月に初版が発行された『Web 標準の教科書 — XHTML と CSSでつくる “正しい” Web サイト』。なんとなく雰囲気が伝わるといいんですけど、いわゆる「Web 標準の時代」とでも言うべき時代に僕はこの世界に入ったわけです。当時の空気としては「これからは HTML よか XHTML ですよ」という流れがほとんど不可逆的なものとして捉えられていたと思います。以来 3 年間、僕は個人でも仕事でもいくつものドキュメントをマークアップしてきましたが、「これからは XHTML」っていう考えに大した疑問も抱かずに、「とりあえず XHTML」でやってきたわけです。

でもそろそろ時代が「これからは XHTML」ってのとはちょっと違うとこに来てるなー、とのん気な僕がようやく感じ始めたのがこの春。HTML 5 が盛り上がりを見せる反面、XHTML 2.0 はどうも「来ない」っぽいと。例えば An Event ApartSafari 4 なんかのサイトが HTML 5 で書かれているの見て、「あ、もう始まってるんだ…」と思ったりとか。「くたばれ『Web標準』」って何よ?Dave Shae が HTML にスイッチすることを表明した記事 とかも刺激になりました。

だったら一気に HTML 5 で、というチョイスももちろんあったわけです。特にこのサイトのように Web のフロントエンド技術を話題にするようなサイトならその意義もおおいにあるでしょう。でもやっぱりまだそこまではちょっと、というのが本音です。独立したページでいろいろ実験するとかはやっていきたいですけど。

となると、すでに XHTML で構築しちゃったんだから、HTML 5 が固まるのを待ってリブートすれば? というのもまたひとつの選択肢でしょう。実際、僕も仕事で運用している XHTML サイトをいちいち HTML に書き換えるなんてことは提案しないでしょうし。僕がこのサイトを HTML 4.01 に書き換えたのは、もちろん HTML 5 に備えてではあるんですが、それよか大きいのが、今まで感じていたジレンマを解消できると思ったからです。

XHTML を書くことには常にジレンマがつきまといます。XML 宣言のジレンマ—ほんとは書くべきなんだろうけど、書くと IE で面倒なことになるからとりあえず省略—とか、メディアタイプのジレンマ—ほんとは application/xhtml+xml が推奨されてるらしいけど、やっぱり IE で上手くいかないのでとりあえず text/html—とか。もちろん、ここらへんのジレンマをちゃんと受け止めるというか、例えば IE の Quirks モードにきっちりつきあったり、コンテント・ネゴシエーションしたりってアプローチもあります。ありますが、じゃあそこまでして XHTML でありたいか、つまり XML でなければならいないかというと、少なくとも現時点でのこのサイトはその必要がまるでないわけです。僕が今まで仕事で書いてきた XHTML もそう。

もうひとつ、XHTML を選ぶ理由としてよく言われる、XHTML の「X」の部分、つまり拡張性について。これってけっこうクセモノというか、上手いとこ突くなあというか、ひっかかりやすい罠というか、なんかそんな風に感じてます。というのも、XHTML って HTML が書ければほとんど書けちゃう—つまり学習コストが低い。コストがほとんど変わらないの加えて「なんならオプションでいろいろと追加できますよ」とか言われれば、そりゃ「じゃあ、とりあえずこっちにしとこうか」とかなりません? なりますよね? だって、必要がなければ使わなくたっていいわけだから。でもさ、その拡張性があとから必要になったこと、ありますか? 少なくとも僕はこの 3 年間で一度もなかった。MathML? XSLT? んー、とりあえず、今はいいや。でしょ?

これってレンタルヴィデオ屋の会員証にクレジットカード機能がついてるみたいなもんでしょ、言ってみれば。会費は変わらず、今までどおりヴィデオは借りられて、しかもお買い物もできちゃう、みたいな。ただヴィデオを借りるばかりでクレジットカードを使わないでいると、この機能の存在自体を忘れがちだけど、でもこの余分のおかげでカード会社との契約書とかの煩雑な手続きが発生するし、ひょっとするとなんらかのトラブルが起こる可能性だってあるわけで。やっぱタダじゃ済まないというか。じゃあもう面倒だからこの際ハッキリさせようと。俺はただヴィデオが借りたいだけなんだと。もしクレジットカードが必要になったら、そんときは改めてお願いするわ、と。

まあだいたいこんなことを考えて、XHTML から HTML への切り替えに踏み切った次第です。やってみて、「マークアップはまず文書型の選択から」という当たり前すぎることを再認識できたのがすごく大きな収穫。いかに今までなにも考えずにマークアップしてきたか、ということです。だからこれから、やっぱ XHTML 1.1 で、とか、ためしに HTML 5 にしてみる、とかいう発想を持てるようになったと思う。まあ当面このサイトでは、HTML 5 に備えた HTML 4.01 の設計、みたいなのを模索してみたいと思います。