ヘッドフォンを買った。ゼンハイザーのちょっといいやつ。5年近く勤めた会社を辞めたところだったので、転職祝いとしてこのくらいの贅沢は許されるだろうと自分に言い聞かせて。
オーディオ機器と呼べるものを買うのはずいぶん久しぶりだ。最後にヘッドフォンを買ったのはいつだったかも思い出せない。おそらく前世紀のことだと思う。当時はかなり貧乏だったけど、音楽を聴くためのシステムにはそれなりのお金と手間をかけていた。アンプにスピーカー、ターンテーブル、CDプレイヤー、カセットデッキ。それが今ではもっぱらスマホとワイヤレス・イヤフォンの組み合わせになり、音質やなんかはあまり気にしなくなってしまった。
中学生の頃からか、ずっと音楽を聴きつづけてきた。映画をしばらく観ない時期があったり、読書の意欲がわかないことがあったりしても、音楽への興味を失うことだけはなかった。いつだって何かを聴いている。だったら音楽を聴くこと自体をもっと大事にしてもいいんじゃないか、とあらためて思う。
新しく買ったヘッドフォンは有線で据え置き型のDACに接続している。だから聴いているあいだはどこへも行けない。このつながれた感覚がなんだか嬉しい。